オープンダイアローグがひらく精神医療2022年04月16日

 斎藤環 <日本評論社・2019.7.9>

 フィンランド発の新しい精神疾患治療法であるオープンダイアローグを、早くから日本で紹介、実践してきた医者の一人である著者が、種々の雑誌に発表していた評論のまとめが中心だが、昨年読んだ西成地区の子ども支援に関する本の著者である村上靖彦・阪大教授との対談も含まれ、さらにオープンダイアローグ対話実践のガイドラインを付録としている。
 「ひきこもり」関連で数冊読んだ著者の本と同様、哲学の話がかなり含まれるため、少し読みにくい面もあるが、森川すいめいが書いたオープンダイアローグの本と比べて、精神医学全般における位置づけや、日本での普及の見通しなどの俯瞰的な見方が示されていて、両方を読むことで、より理解が深まると感じた。
 以前、斎藤は「ラカン派」だったそうだが、オープンダイアローグへの期待が非常に高く、それをいかにして日本の精神医療やその他の支援活動に導入するか、を本気で考えていることが伝わってきた。残念ながら少なくとも当分、オープンダイアローグが日本の医療の世界に広がるとは考えにくいが、精神科医が関わらない領域、ひきこもり支援や様々なカウンセリング、お悩み相談などの場でオープンダイアローグの手法や精神が活用されるようになることを期待したい。

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